thalidomide療法が有効であった難治性多発性骨髄腫 横浜鶴ヶ峰病院内科医 石山泰二郎 Refractory multiple myeloma responded by thalidomide Taijiro Ishiyama Yokohamatsurugamine hospital 【はじめに】 MP療法は、1960年代に確立し、以後gold standard療法として使われてきた。近年、thalidomideの出現と共に、作用機序の違いよりdexamethasoneと併用、およびMP療法との併用が検討されるに及んでこの歴史が幕を閉じようとしている1)。 今回、難治性多発性骨髄腫に対しthalidomideにて加療し、外来治療が可能になった1例を報告すると共に、MPT療法の結果をあわせて報告する。 【症例】 56歳男性。平成15年7月に多発性肋骨骨折および腰痛で多発性骨髄腫を発症。VAD療法、MP療法、ROAD療法に抵抗性で、12月よりbisphonateに反応したことより、平成16年1月よりthalidomide 200mg/dayを使用したところ、IgG5,420mg/dlより低下し、10月時点で2,048mg/dlと低下した。投与後、骨痛・腰痛減少し、2ヶ月で外来治療が可能になった。副作用は、眠気、便秘、皮疹、めまい、失神、かゆみなどを認めたが、使用継続している。その後、MPT療法に変えたところ、さらにIgGに著明な低下を認めている。 【考案】 多発性骨髄腫に対する化学療法としてMP療法が行われて来たが、奏効率50%、寛解到達率5%で、平均生存率約3年である。また、VAD療法は、よく使われているが、MP療法より良い結果は出せていない。また、アルキル化剤を中心とした多剤併用療法も行なわれてきたが、MP療法との無作為比較試験では、生存期間で両者に有意差を認められていない2)。また、多剤併用療法後の移植も行なわれているが、結局再発する3) thalidomide の作用機序は、不明である。骨髄腫による血管新生促進に対しthalidomide による血管新生抑制作用が働くという考えが魅力的な考えだが、いまだ明白ではない。thalidomide には、さまざまな作用機序が、推定されている。第一に、thalidomideが骨髄腫細胞及び骨髄支持細胞(ストローマ細胞)に直接作用し、増殖抑制および細胞死をもたらす機序。thalidomideによる奇形作用が、フリーラジカルによるDNAの損傷とされているが、ここでも重要な可能性がある。第二に、骨髄腫細胞のストローマ細胞への接着は、骨髄腫細胞のサイトカイン産生および生存を促すが、その作用を阻害し、その結果骨髄腫細胞の増殖及び生存の抑制をもたらす機序。そのサイトカインは、骨髄腫細胞の増殖および成長を促す。第三に、接着分子を修正する事により骨髄腫細胞の増殖および生存に影響する。第四に、骨髄腫細胞は、interleukin-6, 1s, 10、tumor necrosis factor 、などのサイトカインを産生するが、これらのサイトカインは、骨髄腫細胞の増殖および生存に影響するが、thalidomideは、これらのサイトカイン産生に影響する。第五には、ストローマ細胞及び骨髄腫細胞よりのvascular endothelial growth factor (VEGF)やbasic fibroblast growth factor (bFGF)分泌を抑制し、骨髄の血管新生を抑制する機序。第六に、CD8T細胞にinterferon- ,interleukin-2を産生誘導する事によリ骨髄腫細胞を抑制する機序が挙げられている。 thalidomideは、単独療法で大量化学療法に抵抗性症例を含む抵抗症例に20ないし48%有効とされた。その後、dexamethasoneとの併用療法が、治療抵抗症例で45%に有効とし、相乗効果を認めた。さらにthalidomide単独療法に抵抗性である症例においてdexamethasoneを併用することにより30%の症例が、有効性を示した。 さらに最近は、thalidomideとdexamethasoneとの併用療法(TD療法)に、更なる化学療法が追加されてきた。治療抵抗性多発性骨髄腫患者において、TD療法に更なる化学療法を追加する事により、67-79%の有効性を認めてきた3)。今回注目する事は、MP療法とMPT療法の新規登録多発性骨髄腫における比較試験である1) 平均年齢72歳で各100例でMP療法とMPT療法の比較試験が行なわれ、MPT療法が、CR率25.9%(MP療法;4.2%)と驚異的な数字を出した。15ヶ月の経過観察では、MPT療法の29%が再発(MP療法;71%)、12ヶ月のEvent free survival(EPS)では、MPTは、67.8%(MP療法;32.4%)、これらの成績は、BMTと遜色がなかった。今後、thalidomideは、作用機序の違いにより既存の化学療法とさまざまな組み合わせで試みられるだろう。
【結語】 thalidomideは、現在まで個人輸入で、使用経験がなかったが、非常に使い易い薬剤であった。thalidomideが、難治性多発性骨髄腫に対する有効性がある事が示された。欧米では、積極的にthalidomideは、多発性骨髄腫に対し有効であり、first-lineからの治療薬として検討されている4)。
【文献】 1. Palumbo A et al:a prospective randomized trial of oral melphalan,prednisone, 2. Srkalovic G et al:use of melphalan,thalidomide,and dexamethasone in treatment of refractory and 3. Dimopoulos MA et al:Treatment of plasma cell dyscrasias with thalidomide and its derivatives. 4. Singhal S et al:Antitumor activity of thalidomide in refractory multiple myeloma. 5. Kyle RA et al:multiple myeloma.NEJM 351:1860-1873,2004.
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